入社してから数年が経ち、一人でできる仕事が増えてきた部下に、管理職が後輩の指導をしてもらいたいと思うことは当然のことといえるでしょう。しかし、「後輩の指導を頼むよ」と言えば、すんなり「はい、わかりました」と言ってくれる部下ばかりではなく、困った経験をもつ管理職も多いのではないでしょうか?ここでは、部下に後輩の指導を依頼する際に、押さえておきたいポイントについて紹介します。
後輩の指導を嫌がる理由
まずは、後輩の指導を嫌がる理由について、整理してみましょう。Z世代が後輩を指導する年齢になってきていることから、Z世代の特性を考えると嫌がる理由が見えてくるかもしれません。ここでは、Z世代の特性から後輩指の導を嫌がる理由を3つ紹介します。
後輩の指導を嫌がる理由1:人の指導はできない!
Z世代は、何かをする前に選択肢が用意されていることが多い世代。そのため、自分で一から考えることに慣れていない人も多いでしょう。そんな世代にとって、後輩という自分以外の存在に対して何をどう指導すればいいのかは見当もつかないことであり、簡単には承諾できないというのも理解できるのではないでしょうか。
管理職の立場からすれば、自分が指導を受けてきたことを後輩にするのだから、そんなに難しいことを依頼していると思えないかもしれません。しかし、部下の立場からすれば、自分がしてもらったことをすればいいと言われても、同じことをすること自体も難しいと感じるかもしれませんし、後輩と自分は性格や能力など同じ人ではないので、何をすれば自分の時と同じ指導といえるのかもわからず、不安に感じる可能性もあるでしょう。
また、ネットでのコミュニケーションが得意で、対面でのコミュニケーションに苦手意識を持つ傾向のあるZ世代にとって、いくら年齢が近いといっても、馴染のない後輩とのコミュニケーションにも負担を感じてしまうことも、「指導できない!」と思う要因になっているかもしれません。
後輩の指導を嫌がる理由2:責任は取りたくない!
Z世代は失敗を極度に恐れる傾向があります。そのため、能動的な行動を起こすことに躊躇することも多いでしょう。後輩の指導は、後輩から積極的に質問する、業務を理解しようとすることがない限りは、指導担当になったら自分が能動的に動かなくてはなりません。後輩社員もZ世代のため、積極的に指導担当者へ質問をする、業務を理解しようとする可能性も高いとは言えません。そんな中、自分の指導により、後輩が育たない、または後輩が辞めてしまうということがあれば、失敗を恐れるZ世代に与える影響の大きさは想像に難くないといえます。
責任が発生しそうなことは避けて通りたいZ世代の特性を考えたら、後輩の指導を嫌がるのは当然のことかもしれません。
後輩の指導を嫌がる理由3:自分のことで精一杯!
後輩の指導を依頼しようと管理職が考える部下は、やっと自分の業務になれ、自分なりの工夫ややり方が定まってきたころの人が多いかもしれません。管理職から見れば、自分なりのやり方が定まってきたのだから、新たに後輩指導という経験も積ませたいと考えることは自然なことといえます。しかし、自分なりにやっと業務をこなせるようになってきた部下にとって、自分の業務以外に後輩を指導するという新しい業務が加わることは、自分の業務への影響を考えたら受け入れることが難しいと考えても不思議ではありません。
例えばやっと毎月の目標を達成できるようになった営業担当者であれば、後輩指導をすることで、目標の達成が難しくなるかもしれません。また、欠品せずに発注がやっとできるようなった在庫担当者であれば、業務が増えることで発注漏れがまた起きたらどうしようと不安になるでしょう。自分を大切にするZ世代の特性から、自分の業務が優先という考えが強く、自分の業務に支障が出ることを恐れて、部下の指導まではできないと考える部下も多いのではないでしょうか。
部下に後輩の指導依頼するときの3つのポイント
部下が後輩の指導を嫌がる理由がわかったからといって、管理職の部下に後輩の指導をしてほしい気持ちは変わらないでしょう。部下の成長を願うとともに、年齢が近いからこそ管理職とは違う視点をもって後輩を育ててほしいなど、管理職側にも後輩の指導を任せたい理由があるはずです。
では、後輩の指導を依頼する際に、どんなことを押さえておけばいいのでしょうか?部下が後輩の指導を嫌がる理由に合わせてポイントを紹介していきます。
押さえたいポイント1:後輩の指導を依頼する理由をきちんと伝える
後輩の指導を依頼する部下は、承諾してくれるなら誰でもいいわけではないでしょう。管理職が、その部下を選んだ理由が必ずあるはずです。逆に理由もなく選んだのでは、後輩の指導を嫌がる部下に依頼しても説得力がなく拒否されるでしょう。まずは、部下の業務状況、能力、経験、また性格なども考慮し、後輩の指導を依頼する理由は何なのかを管理職が整理しておく必要があります。
「人の指導はできない!」と考えている部下に、後輩の指導担当者に選んだ理由はもちろんのこと、その部下なら指導ができると考えた理由をきちんと説明しましょう。部下が「もしかしたら自分でも後輩の指導ができるかも!」と前向きに捉えられるようにすることが大切です。
その際に注意したいのは、「社会人として成長するには後輩の指導経験も大事だよ」「自信がないと言っていた先輩たちも実際にやってみると、楽しんでいたよ」などという、一般的、または先輩など人の例だけで話をするのではなく、依頼したい部下の状況や能力、性格などを理解していることがわかるように、そして、その部下だからこそ依頼したいということが伝わるようにすることです。「誰でもいいんじゃないか」「他に依頼する人がいなかっただけだろう」と部下が感じたら、「後輩の指導をやってみよう!」という気にはならないでしょう。だからこそ、後輩の指導を依頼する理由をしっかりと整理してから、部下に話す必要があるのです。
押さえておきたいポイント2:指導の責任は上司である自分にあることを伝える
誰でも自分が一番近くで一緒に仕事をしていた人が業務を覚えようとしなかったり、会社を辞めたりしたら、自分の責任だと思うでしょう。それが、入社数年の部下であれば、その衝撃の大きさは計り知れないものかもしれません。
管理職は後輩社員が業務、チームに慣れるため、成長するために、管理職として、またチームとして、どのようなサポートができるのかを、部下に後輩の指導を依頼する前に考えておく必要があります。後輩の指導をする部下に対し、心構えから指導の仕方まで、誰がどのようにレクチャーするのか、チームメンバーはどのようにサポートするのか、後輩の指導をする部下と定期的に会話をする機会を持つなど、部下の指導に対する悩みを軽減し、自信をもって後輩指導ができる環境を作っておきましょう。
管理職は後輩の指導を部下に依頼する際、後輩のやる気や成長などの指導責任は管理職にあること、そして、自分やチームがどのようにサポートをするのかを先に伝えることで、「責任を取りたくない」と考える部下の不安を軽減させることが大切です。また「環境が整う、または環境を作る準備を進めていく中」で指導の依頼をしましょう。口先だけでサポートするから大丈夫と言っても、具体的に何をするのかが示されない限りは、部下の不安を軽減させることにはつながらないからです。本当にサポートしてくれるんだなと思われるように、しっかりと準備をしてから話しましょう。
押さえておきたいポイント3:業務の不安解消に向けたサポートを伝える
後輩の指導の責任は管理職、そしてチーム全体にあることを理解できたとしても、「自分の業務に支障が出るかも!」という不安を払しょくすることは難しいでしょう。もちろん、後輩の指導をするからといって、例えば目標数値を下げる、発注漏れがあっても許すなど、部下の業務の責任範囲を狭める、業務量を減らすという選択肢はなく、部下の成長を考えれば、今の業務をしっかりこなしたうえで、後輩への指導もしてほしいと管理職は思っているはずです。
一方、部下の立場では、これまでと同じ業務をこなしながら、後輩への指導を追加されることに対する不安があるのは当然のことです。そのため、後輩を指導する部下の業務についても、サポートが必要なのです。後輩の指導に時間をとられるようになったことで、うまく進められなくなった業務はないかなど、管理職だけでなく、チームメンバーから声かけを行う、うまく進められるようにアドバイスをすることが大切です。先輩社員から自分が指導担当者だった時、自分の業務に支障がでないようにどのようなことをしたかを伝えることも、指導を担当する部下には参考になるかもしれません。後輩の指導を引き受けても、自分の業務状況をチームメンバーが気にかけてくれる、理解してくれているという安心感を持ってもらえるように、伝えていきましょう。
ポイントを押さえて、後輩の指導を「やります!」と部下に言ってもらおう
管理職の中にはポイントを読みながら、「先輩社員になったら後輩の指導をするのは当たり前なのに、なぜこんなことまでしないといけないのか」と思う人もいるかもしれません。しかし、Z世代が先輩社員の年齢になってきた今、Z世代の部下と管理職の常識で話をして、うまく伝わらなかった経験を持っている管理職も多いのではないでしょうか。
3つのポイントは管理職だけが負担することではなく、チーム全体で行っていくものです。指導を受ける後輩も、後輩の指導をする部下もチームの一員です。後輩の指導というものをきっかけに、目標達成とは違った視点からもチーム力を高めることにもつなげられると思えば、管理職の気持ちも軽くなるのではないでしょうか。
3つのポイントを押さえ、部下が快く後輩の指導を引き受けられるようにしていきましょう。
グローネス・コンサルティングでは、「Z世代がずっと居たいと思える会社になる!」WithZ研修を提供しています。管理職がZ世代の部下をどうやって育てていけばいいかのヒントを得られる「お膳立て」マネジメント研修をはじめ、先輩になったZ世代向けの研修、OJT研修などがあります。Z世代への対応についてお悩みがありましたらお気軽にお問い合わせください。