管理職は業務が多く、少しでも負担を減らしたいと思っている人も多いでしょう。昨今では「Z世代」の部下育成で悩みをもち、管理職の負担の要因になっているケースも増えているのではないでしょうか。ここでは、Z世代の部下育成に焦点を当て、なぜ管理職がラクになれないのかの理由、その対応として考えられる方法について説明します。
Z世代の部下育成で管理職がラクになれない理由
部下の育成でラクをすることを求めることがそもそも難しいことかもしれません。しかし、Z世代の部下育成においては、これまで以上に負担を感じている管理職もいるのではないでしょうか。考えられる理由について説明します。
1.指示の出し方
Z世代は知りたいことがあれば、すぐにネットで調べることが当たり前になっています。動画を見れば、説明文を読んで理解する必要もありません。なんでも簡単に調べられるため、まず自分で考えてみるというのが難しい傾向を持っています。指示を出すとき、「(自分なりに考えて)やってみて」ではZ世代の部下は何をしていいのかわからず、具体的な指示を出さなくてはなりません。若手社員時代が遠い昔になった管理職にとっては、どのレベルから説明すればわかりやすいかも考えなくてはならず、「指示を出す」という1つをとっても悩んでしまうでしょう。
2.業務を与える理由
Z世代は個性を大切にし、またタイムパフォーマンス(タイパ)を重視する傾向があります。そのため、与えられた業務について「なぜ自分なのか」「自分がするよりその業務に慣れている他の人がやったほうがいいのではないか」など理由を知りたがる人もいるでしょう。管理職が若手社員だった頃は上司に依頼された業務はやるのが当たり前で、いちいち説明を求めるという考えはなかったかもしれません。そのような管理職にとって、業務を依頼するたびに説明が必要なことを負担に感じるのではないでしょうか。
3.キャリアプラン
Z世代は親、学校、ネットからお勧めの選択肢を与えられて育ったという背景があります。「これがやりたい!」としっかりとした目標を持っているZ世代ももちろんいますが、自分から何をしたいかを考えなくても選択肢は用意されているものだと思っている人も多いのではないでしょうか。親や学校は個性や能力を理解しての選択肢を用意し、ネットにおいてもネット上での行動履歴から「お勧め」を提供してくれます。管理職が親、学校、ネットと同じレベルで各部下の個性や能力を理解するのは難しいでしょう。そのため、選択肢を用意することに加え、どのような選択肢を提供すべきかについても、悩んでしまうのではないでしょうか。
4.成長に対する実感
成長に対する実感は、Z世代にかかわらず誰もがほしいものでしょう。まして、承認欲求が強い傾向にあるZ世代にとっては、成長していると実感させてもらうことを他の世代よりも求めているのではないでしょうか。しかし、「成長」と言ってもZ世代の求める「成長」と異なれば、管理職がいくら実感させていると思っても本人たちには届かない可能性があります。終身雇用が形骸化し、大手企業であっても永遠に存続するとは限らない環境の中で成長してきたZ世代にとって、その会社だけで通じる技術や経験では「成長」と実感するのは難しく、どこでも通用する能力が高まることが「成長」と考えているといえるのです。承認欲求を満たし、「成長」を実感してもらうには、管理職はその業界、またはその職種において求められる経験や技術を伝えたうえで、それを評価していくことが必要になり、これも負担を増やす要因になっているといえます。
5.価値観の違い
Z世代は子どもの数も減少傾向にあり、大切に育てられ、叱られる経験も少なかった人も多いのではないでしょうか。また生活面でも仕事面でも管理職とは価値観が大きく異なります。そのため、管理職がちょっと注意したことでも、Z世代はショックを受ける、管理職の発言や態度で意図せぬ誤解が生じZ世代の部下を悩ませてしまう可能性があります。Z世代の部下が誤解している、ショックを受けていることがすぐにわかれば対応の仕方もあるかもしれません。しかし、その場では何の反応もなかったため気にも留めていなかったら、次の日から会社に来なくなるなど管理職が想定していなかった行動をZ世代の部下が起こす可能性もあります。どう受け取られているかがわからないから接し方もわからない、これも管理職の負担の要因になっているのではないでしょうか。
Z世代育成で管理職がラクになるためには
管理職がZ世代の部下育成で負担に感じる要因についてみてきました。ここでは、各要因への対応法について考えていきます。
1.指示の出し方
業務の指示出しは基本的にZ世代の部下の先輩社員に任せるという方法があります。これは大変なことを先輩社員に任せるというのではなく、先述したように若手社員時代が遠い昔になった管理職よりも先輩社員のほうが現場にいるので的確に教えられる、Z世代の部下に年齢が近い社員のほうが価値観の差異が小さいため、コミュニケーションがとりやすいなど、Z世代の部下が業務への理解や納得感を得やすいという理由です。先輩社員も後輩を指導することで成長することができるでしょう。もちろん、すべてを先輩社員に背負わせてしまわないように注意が必要です。管理職は、進捗など情報共有、先輩社員の指導に対する悩み相談、先輩社員にOJTトレーナー研修を受講させるなどのサポートは欠かさないようにしましょう。
2.業務を与える理由
Z世代の部下が担う業務は、Z世代の部下個人の業務であると同時にチームとして必要な業務であるといえます。そこで、チーム定例などを活用して、チーム全体の業務、各自の役割などを説明するのも一つの方法です。それにより一つ一つの業務に対して説明を行う必要はなくなり、状況に応じて適時補足するという形をとることができるでしょう。チームの業務をメンバー全員が理解することで、メンバー間の理解の相違を防ぐことにもなり、また、Z世代の部下の業務について管理職以外の他のメンバーからも説明ができるようになることも利点と言えます。
3.キャリアプラン
Z世代の部下がイメージしやすいような選択肢を用意することが大切です。まずは、チームメンバーのこれまでのキャリアプランを選択肢として用意するのがいいでしょう。一から各部下のキャリアプランの選択肢を考えるよりは、悩まずに済むのではないでしょうか。そしてZ世代の部下との普段の会話、面談などで要望や能力を聞きながら絞るようにすると話が進みやすくなります。Z世代の部下も、先輩社員の業務内容や立ち位置を知ることで具体的なイメージを持つことができ、また自分も一緒になって選択していくことで、納得感が得やすいといえます。
4.成長に対する実感
一般的に社会人として必要な経験・知識に加え、その業界・職種で必要な経験・知識を書き出したリストを作成し、Z世代の部下に共有するという方法があります。自分の経験だけではリストの作成が難しい場合もあるかもしれません。その場合は、チームメンバーに現場から考えられる必要な技術や知識について聞いてみるのもいいでしょう。Z世代の部下に業務を依頼するときも、業務がリストのどの部分にあたる経験なのかで説明しやすくなるかもしれません。Z世代の部下もリストによって現在の業務による経験の必要性を感じ、評価により成長に対する納得感を得ることができるでしょう。
5.価値観の違い
Z世代の部下に限らず、人の価値観は様々です。そのため、一人一人に気を付けていては、言動に制限がかかり、何もできなくなってしまうでしょう。ただ、自分が意識していなくても、管理職という立場、年齢などにより、相手には高圧的に感じ取られてしまう可能性があることは意識しておきましょう。高圧的に感じるかどうかは、チームメンバーに聞いてみるのもいいかもしれません。高圧的に取られたほうが都合のいい場合を除いては、自分が高圧的に思われていないかを意識し、それ以外については意識しすぎないことも負担を減らすためには必要なことではないでしょうか。
Z世代の部下育成の負担を軽減し、管理職はラクになろう
Z世代の部下育成を管理職一人で行うことは難しいといえます。また一人では視点が限られてしまい、Z世代の部下の個性や能力を知るのも限界があるでしょう。チームメンバーなど人を巻き込むことで、負担を減らしましょう。チームメンバーも巻き込まれることによって、一緒にメンバーを育てていく気持ちが持てるようになり、チームの協調性が高まることにもつながるでしょう。メンバーそれぞれの視点によって、Z世代の部下はもちろん、各メンバーの個性や能力を知ることもできるでしょう。
「ラクになる」と書くと後ろめたさを感じることもあるかもしれません。しかし、「ラクをする=チームメンバーを巻き込む」と考えれば、メンバーの成長、チーム全体の意識向上などにつながることになるため、有意義なやり方といえるのではないでしょうか。Z世代の部下育成をメンバーと一緒に行い、管理職はラクになりましょう。
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