部下育成は多くの管理職の悩みと言えるでしょう。リクルートマネジメントソリューションズが2023年に行った調査においても「管理職が日々のマネジメントで難しいと思っていること」では「メンバーの育成・能力開発をすること」が56%で第1位となっています。(マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2023年)
一方でActionCOACH東京セントラル株式会社が行った調査では、Z世代の部下のマネジメントに関して意識していることは「業務について丁寧な指導をしている」が68.7%で1位になるなど、Z世代部下に合わせた指導方法を取り入れる管理職も増えているとも言えます。(「Z世代のマネジメントに関する実態調査」)
しかし、同じくActionCOACH東京セントラル株式会社の調査でZ世代の部下のマネジメントに悩んだことのある管理職があげた悩みが「働くことへの意識や価値観が違う」66.7%で1位になっていることからも、まだZ世代に対する理解とその対応は難しいと考えている管理職も多いのではないでしょうか。
ここでは、Z世代の部下の育成・指示の際、押さえておきたい3つのポイントについて紹介します。
ポイント1 なぜその業務をするのかの理由を伝える
ネットの発達により、動画や漫画など趣味も含めて多くの選択肢がある環境でZ世代は育ってきました。多くの選択肢があるというのは、言い換えれば、興味がない、自分には必要ないとわかれば、すぐに他の選択肢に変更することが可能であるということになります。また数多い選択肢の中で、自分が何でこれを選んだかの理由も個性を大事にするZ世代にとっては重要です。たとえ選択したきっかけが親や友人、インフルエンサーの紹介であったとしても、自分にとっての選択した理由や意味を持つことが必要なのです。
管理職から見れば、趣味と業務は異なるものであり、業務を与えるのに理由の説明など必要ないと思われるかもしれません。しかし、Z世代の部下にとっては、自分が選択する際に理由を持ちたいように、なぜ他の人ではなく自分にその業務が与えられるのか、つまり自分が選択された意味を知りたいと思ってしまう可能性が高いといえます。その業務を与えた理由を説明され、管理職が自分のことをしっかり見ていてくれて与えられた業務であることが理解できれば、自分の存在を認めてくれているという安心感にもつながり、業務も前向きに進めることができるでしょう。
ポイント2 まずは実際にやっているところ見せる
ネットで検索すればすぐに回答を得られる、そして詳細な説明は図や動画で説明してもらえる環境で育ったZ世代は、「とりあえずやってみて」「これまでの資料を参考にしてみて」といった「回答が与えられていない」指示の出し方では何をどうすればいいのかわからないのは当然のことかもしれません。
2018年の調査のためZ世代よりは少し上の世代になりますが、リクルートマネジメントソリューションズの「育成担当」と「新人・若手」の経験の変化を比較する調査で「自力」(誰も助けてくれない状況で、自分で何とか乗り切る)について、育成担当は66.5%が経験を持っているのに対し、新人若手は52.1%、「試行錯誤」(正解がなく先が見えない中で試行錯誤し続ける)については育成担当が57.6%に対し新人若手は47.4%となっています。(「新人・若手の育成についての実態調査」2018)
Z世代では育成世代との差がさらに広がっている可能性があります。そのため、最初から「自力」や「試行錯誤」を求めるのではなく、まずは実際にやっているところを見せるなどZ世代から見たら「回答」と思えるものを与えることを心掛けることが大切でしょう。
ポイント3 業務がどのようなスキルの取得、成長につながるかを伝える
Z世代は、vucaの時代に育ち、自分のスキル、能力を高めておく必要性を強く感じている世代とも言えます。リクルートマネジメントソリューションズの調査では、「働いていくうえで大切にしたいこと」の約5割が「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」と回答し1位となっています。そして、10年前と比較して11.5ポイントも高まっています。(「新入社員意識調査2022」)
また、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視するZ世代は業務においても、費やした時間に対する成果を重視する傾向が他の年代に比べ高くなっています。(消費者庁「「令和4年度消費者意識基本調査」)
2つの調査結果から読み取れることは、Z世代は、効率よく成果をあげ、スキルや知識を身につけたいという傾向があるということです。もちろん、試行錯誤していく中で得られる貴重な経験もあるでしょう。しかし、管理職はこのZ世代の特性を理解し、与えられた業務について、どんなスキルや知識が身につき、どのように役に立つのか、また効率的に成果を出すためのアドバイスなどをしていくことが大切です。スキルや知識が身につき、成長しているという実感をZ世代の部下が持てるようにすることを優先しましょう。
ここで注意したいことは、Z世代が求めるのは、「どこでも」通用するスキルや知識であるということです。管理職は「自社ではこのようなスキルが役立つ・・・」のような視野を自社に絞った言い方ではなく、「この業界では」「技術者としては」のような広い視野で身につくスキルや知識について説明することを忘れないようにしましょう。
3つのポイントは「永遠に」押さえておく必要はない?!
Z世代の部下育成・指導の際に押さえておきたい3つのポイントを紹介してきました。管理職の中には、「社会人になったら自主的に動くべきだ」「こんな手のかかることをやっている余裕はない」と思われる人も多いかもしれません。しかし、Z世代が育ってきた環境を考えれば、社会人になったから急に自主的になれと言われても難しいのは当然ともいえるでしょう。
もちろん、3つのポイントを押さえた育成・指導を永遠に続けなければならないといっているわけではありません。Z世代の部下が業務に慣れるまで、組織に馴染むまで、自分がチームに必要な人材であると実感できるまでは、Z世代の部下が安心して前向きに業務にあたることができるようにサポートしていきましょう。Z世代の部下に後輩ができた時、先輩として管理職がZ世代の部下にしてきたことと同じようなサポートができるようになることを目指してみてはいかがでしょうか。
ポイントを押さえ、育成・指導の悩みから解消されよう
管理職は「Z世代の仕事に対する意識や価値観が自分たちとは異なる」ということを頭では理解していても、現場では戸惑うことも多いでしょう。どうしたらいいのか悩む前に、3つのポイントを押さえた育成・指導を行ってみましょう。その中で、Z世代の部下のそれぞれの個性を知り、少しずつサポートする内容を変更、軽減していくというやり方をお勧めします。やみくもにやるのはよくないことですが、Z世代の特性から考えられる指導のポイントを押さえたうえで、まずやってみることで悩みの解消につなげてはいかがでしょうか。
グローネス・コンサルティングでは、Z世代育成に特化した研修「With Z研修」を開発しました。その中に管理職向け研修「お膳立てマネジメント」があります。Z世代の指導について社内で考えてみたけどうまくいかなかった、ファシリテーターを入れることで管理職同士の話し合いを効果的にしたい場合は、グローネス・コンサルティングの「お膳立てマネジメント研修」をご利用ください。研修の概要はこちらからご覧いただけます。企業様の状況によってカスタマイズも可能ですので、ご興味のある企業様はお気軽にご相談ください。