個性を大切にするZ世代。しかし、個性が大切だからといって、個性に合わせた業務ばかりができるわけではありません。また個性と「自分らしさ」は似て非なるものといえます。人の評価に敏感で、横並び意識が強い傾向にあるZ世代には「個性」を意識するより「自分らしさ」を意識するほうが大切かもしれません。ここでは管理職がZ世代に「自分らしく」仕事をしてもらうために心掛けたいことについて説明します。
「自分らしさ」と「個性」の違い
そもそも「自分らしさ」、「個性」とは何なのでしょうか。人との違いが見いだせないと「個性がない」と言われるように「個性」は人との比較から導き出される特徴のことです。性格も個性です。誰とも違う「自分」を見てほしいというZ世代の承認欲求を満たすことには「個性」は大事なことといえるでしょう。
一方で、SNSのフォロワー数や「いいね」の数で、常に周囲からの評価を受けてきたZ世代にとっては、承認されることも重要ですが、「目立つ=個性が強い」ことで、炎上することの恐怖も知っている世代でもあります。その恐怖から「目立たない=横並び意識の強さ」があるともいえるのです。
「自分らしさ」は人との比較とは無縁です。自分が、「こうでありたい」などの価値観のことであり、「自分らしく生きること」は自分の価値観を大切にし、自分の性格を尊重することで成り立ちます。人と比べるのではなく自分の中で譲れないもの、それが自分らしさといえるでしょう。「あの人らしい」と言うときのことを思い出してみてください。「○○のような考え方を持っている人だから、△△したんだなあ」という捉え方をしていて、誰かと比較して発した言葉ではないことに気がつかれるのではないでしょうか。
つまり「自分らしさ」と「個性」は一見似ているように思われますが、「人との比較」が入らないという大きな違いがあります。人と比較されることに苦手意識が強いZ世代には「個性」より「自分らしさ」を大切にすることが適しているといえるでしょう。
「自分らしく」仕事をするメリット
「自分らしく」、自分の価値観を大切にし、自分の性格を尊重しながら生きることは簡単なことではありません。仕事も同じです。すべての人が「自分らしさ」、自分の価値観を前面に押し出してしまったら、チーム、組織として方向性が定まらない場合も出てくるかもしれません。一方で「自分らしく」仕事をすることには、メリットがあります。
・自分らしく働けるから、仕事が続けられる
・自分らしく働けるから、イキイキとしていられる
・自分らしく働けるから、自信が持てる
・自分らしく働けるから、自分の仕事に誇りが持てる
・自分らしく働けるから、自分の可能性を高めたくなる
つまり、自分の価値観を大切にしながら仕事ができれば、前向きに頑張れるといえるのです。与えられた業務についても、人との比較が入る「個性」では、自分がやる必要ある(他の人のほうが適しているのでは?)と考えてしまうかもしれませんが、「自分らしさ」では、与えられた業務をしっかりとやるために「自分らしく」できることは何かを考えることにつながるため、「個性重視」より「自分らしさ重視」に導いていくほうがZ世代の部下も業務がしやすくなるのではないでしょうか。
Z世代の部下に「自分らしく」仕事をしてもらうため、管理職ができること
「自分の価値観を大切にして仕事をすること」は仕事を楽しむことにもつながります。価値観にとらわれすぎて「頑固」になっては困りますが、人との比較から導き出されるものに固執せず、Z世代の部下が自分の価値観を大切に仕事ができるようになったら、飛躍的に成長を遂げる可能性も高まるでしょう。では、管理職はZ世代の部下が「自分らしく」仕事をするために、どのようなことができるのでしょうか。
1.管理職が自分の「自分らしさ」についてきちんと把握する
「自分らしさ」といっても、普段から自分が何に価値を感じているのか、譲れないこだわりは何かなどを意識している人ばかりではありません。心地よく仕事ができているときは、自分がこうなりたい、こうしたいと思う価値観と合っているのかもしれません。まず、管理職自身が、「自分らしさ」、自分の価値観や性格などをしっかりと考え、「自分らしく」働けているのかを考えてみることが大切です。
2.「自分らしく」働くことの良さを、自分の働く姿勢で示しながら伝える
「個性」にあった業務が常に与えられるわけではありません。自分に与えられた目標、業務の中で「自分のこだわり、らしさ」を発揮して、結果を出していくことが、業務を前向きにとらえるためにも大事になります。そのことをZ世代の部下に伝えていきましょう。ただ、管理職が「自分らしさ」を大切にしていると言葉だけで伝えても、業務を楽しんでいないのでは、Z世代の部下に「個性」より「自分らしさ」という意味が伝わりません。まずは、管理職自身が「自分らしく」働き、その姿を見せること、そのうえで「自分らしく」働くためにやっていることを具体的に伝えていくと、Z世代の部下も納得し、理解しやすいのではないでしょうか。
3.Z世代の部下が各自考える「自分らしさ」を聞く
外から見えている「らしさ」と自分が考える「らしさ」はイコールではありません。管理職からみた部下の「らしさ」を押し付けるのではなく、部下自身が考える「自分らしさ」、何にこだわり、何に価値を感じているのかを聞いてみましょう。業務を進めていくうえで部下の「らしさ」をどう発揮できるのかを一緒に考えていくことが大切といえるでしょう。
4.「自分らしさ」を深めるために何をなすべきかを考える
先輩社員になり、後輩、部下を持っても「自分らしく」働いていくためには、それに見合った知識や経験が必要になります。例えば、「自分らしく生きる」ことは自然に囲まれた中で自由に生活することであり、それを実現するには引っ越してリモートで業務がしたいと思ったとします。しかし、まだ対面での指示や対話が必要でフルリモートにすることに上司が不安を抱いていたら実現が難しいといえるでしょう。自然の中で生活し、リモートで働くのが「自分らしさ」であるとするなら、担当している業務がリモートで完結する必要があること、リモートでのコミュニケーションが円滑にできるような同僚や顧客などとの関係を築いておくことなど実現するための準備が必要です。リモートという「働き方」だけでなく、このような業務だったら「自分らしさ」をもっと発揮できるのではないかという場合も、同じように実現するには準備が必要です。実現するために必要な知識や経験について、管理職はZ世代の部下に指導する、または一緒に考えていく必要があるのです。
5.「自分らしく」働く先輩をメンターにする、メンターに育てる
管理職とZ世代の部下には世代差による価値観の違いが大きいといえます。「自分らしく」働くために大事にすることも、管理職世代とZ世代では異なるでしょう。そのため、「自分らしく」働けていると思える先輩社員をZ世代の部下のメンターにするという方法があります。または、管理職が「自分らしく」働く意味をZ世代の部下に伝えていくことで、次のメンターに育てていくというのも必要です。
「自分らしく」イキイキ働く部下を育成しよう
「自分らしく」働くは「自分勝手に」働くことでも、何が何でも「自分の主張を押し通す」ことでもありません。それを管理職自身が十分理解して、それをZ世代の部下に伝えていきましょう。「自分らしく」働くことで、イキイキと前向きな部下が増えれば、チームの活気にもつながるでしょう。
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