Z世代の部下との世代間ギャップに悩んでいる管理職も多いでしょう。世代間ギャップはいつの時代にもあるものです。しかし、管理職の中には、自分たちが若手社員だったころ、上司の仕事への考え方、価値観に対して、世代間ギャップはあるものの順応しながら業務を進めてきた経験を持つ人もいるのではないでしょうか。そのような経験がある管理職にとっては、なぜ、自分たちは順応してきたのに、Z世代の部下とはうまくいかないのだろうと不思議に思っているかもしれません。
ここでは、Z世代の部下と管理職の世代間ギャップが大きい理由と、世代間ギャップを埋めるための3つのポイント、そしてそのポイントを押さえるための具体的な方法について説明します。
Z世代の部下との管理職の世代間ギャップが大きい要因は環境変化のスピード
インターネットの普及により、インターネット登場前の比ではないスピードで環境が変化しています。数年どころか数ヶ月、数日の単位で新しいサービスが次々と登場し、それに伴い生活スタイル、業務スタイルともに変化しています。環境がこのようなスピードで変化していく中で育ってきたのが、デジタルネイティブであるZ世代です。管理職とはまるっきり異なる環境で育ってきたといえるのではないでしょうか。
管理職が育ってきた時代と管理職の上司が育ってきた時代にも、もちろん環境の違いがあり、考え方や価値観の世代間ギャップは存在します。しかし、今のような環境変化のスピードと比較すると、管理職とその上司の世代では、共通する経験や共感できる価値観が多少はあったと考えてもいいでしょう。だからこそ、世代間ギャップが存在しても、今ほど管理職は悩まずに業務を進めることができたのかもしれません。
しかし、物心ついた時からスマートフォンがあり、わからないことがあればすぐに検索、道もアプリが教えてくれる、SNSを使えば世界中の人とつながれる、何が欲しいか、見たいかを考える前にネットやアプリがお勧めを教えてくれるという環境が当たり前にあった世代と、大人になってからその環境に触れた世代では、同じ感覚を持つことが難しいことは容易に想像できるでしょう。つまり、管理職が若手社員だったころに上司に感じていた世代間ギャップを基準に、Z世代の部下が管理職に感じる世代間ギャップを想像していると、Z世代部下の反応を理解することは難しく、管理職は「なぜ?」と首をかしげることばかりになりになってしまうのです。
世代間ギャップを埋めるための3つのポイント
管理職がZ世代の部下の育成や業務指示の際に悩む世代間ギャップは、どのようにすれば埋めることができるのでしょうか。埋めるために押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
ポイント1.世代間ギャップはあって当然と「前向き」に受け入れる
先述したように、管理職が若手社員のころに上司に感じていた世代間ギャップとZ世代の部下が感じている世代間ギャップには大きな隔たりがあります。世代間ギャップを受け入れるのには、まず管理職が、自分たちが上司に感じていたことを基準にしては想像できないほどの世代間ギャップを、Z世代の部下が感じていることについて、当然のこととして受け入れることが大切です。
ただ、注意したいのは「まるっきり異なる環境で育ってきたZ世代に、自分たちの話が伝わるわけがない」「Z世代の部下の考えていることがわかるわけがない」という否定的な感情で受け入れてもギャップを埋めることにはつながらないということです。Z世代の部下と仕事への考え方や価値観が異なることは当然のこと、だからこそ部下の考えや価値観を知ろう、尊重しようという部下とのより良い関係性構築につなげる「前向きな」受け入れ方をするようにしましょう。
ポイント2.Z世代の部下の「当たり前」を理解する
世代間ギャップはあって当然のこととして受け入れたからといって、部下への指示の出し方や、育成方法がわかるわけではありません。Z世代の部下は業務に対してどのような考え方、価値観をもち、何を当たり前と思っているのかを理解する必要があります。部下の当たり前を知ることができれば、なぜ自分の指示が伝わらないのか、考えに賛同しないのかなどが理解でき、考えがうまく伝わらないたびに、管理職がZ世代の部下に感じる「なぜ?」を減らしていくことができるでしょう。
ポイント3.自分(管理職)の「当たり前」を伝える
管理職はZ世代の部下の「当たり前」を理解するだけでなく、自分の「当たり前」を伝えることも大切です。業務に限らず、コミュニケーションは、お互いの考え方、価値観を理解することで、意図とは異なる解釈をされる可能性を減らすことができます。「お互い」ということが重要です。管理職がZ世代の部下の「当たり前」を理解したとしても、Z世代の部下が管理職の「当たり前」を少しも理解していなければ、管理職がZ世代の部下の「当たり前」を考えながら話をしているつもりでも、Z世代は管理職の意図とは異なる理解をしてしまうかもしれません。
管理職世代の業務に対する考え方、価値観、何を「当たり前」と思っているのかをZ世代の部下に伝えていきましょう。すべてが伝わるとは限りませんし、共感してもらうことは難しいかもしれません。しかし、Z世代の部下にとっても、なぜ管理職がこのようなことを自分に言っているのか、その背景を知ることで、管理職の意図が理解しやすくなるといえるでしょう。
世代間ギャップを埋めるためには、お互いの「当たり前」を理解する、理解するように心がけることが大切です。
世代間ギャップがあるZ世代の部下への指示出し方法とは
世代間ギャップを埋めるポイントがわかっても、具体的に何をすればいいのかが気になるでしょう。ここでは、世代間ギャップの埋めるには、そして世代間ギャップのあるZ世代の部下に指示を出すにはどうしたらいいかについて具体的に説明します。
1.普段のコミュニケーションを大事にする
部下との面談時はもちろん、普段のちょっとした雑談や打ち合わせなど部下の「当たり前」に触れる機会はたくさんあります。ただ、意識していないと、「何を言っているのかわからない」と感じるだけで終わってしまいます。意識していれば、わからない発言があるとき「なぜ?」「どうして?」と素直に聞くこともできるでしょう。ただ、やみくもに聞くとびっくりさせてしまう可能性があるため、Z世代の部下を理解したいという思いは日ごろから伝えるようにしておくとよいでしょう。
普段のコミュニケーションにおいて、世代間ギャップを埋めるために心がけておきたい点が2つあります。ひとつは自分と部下の会話はもちろんですが、部下同士の会話が耳に入ってきた時も、各部下の価値観、当たり前を気にするようにすることです。もちろん聞き耳を立てろと言っているのではありません。ただ、年齢が近い人同士の会話だからこそ、管理職との会話では感じ取ることができない考え方や価値観が見えることもあるでしょう。ふと耳に入ってくる会話に、価値観を知るためのヒントがあることを知っておくことが大切です。
もうひとつは、ポイント3で説明したように自分の当たり前を伝えることです。自分の価値観を押し付けるような言い方にならないように気をつけながら、「自分が若手社員のころはこうだった」というような話に対して、Z世代の部下がどう思うのかを聞いてみるのもいいかもしれません。部下の考えを聞いて共感できること、自分の仕事への姿勢としては譲れないことなど、相手に強要するのではなく、自分の考え方や自分の価値観を伝えるようにしていきましょう。
2.業務の指示は詳細に
同じような業務指示を出しても、受け取る内容、理解は人それぞれです。業務指示なのだから誰に対しても、同じことを伝えれば、同じことが伝わると考えている人も多いかもしれません。しかし、ちょっと考えると思いあたる経験をもつ管理職も多いのではないでしょうか。例えば、中堅社員であれば、管理職が「あの件だけど、次に進められるように準備して」と言えば伝わるかもしれません。中には、「あの件ですが、進めるために準備始めちゃいますね」と、管理職が指示を出す前に先回りして自分から業務を進めてくれる部下もいるでしょう。しかし、新人・若手のころは経験が少ない分、「次に進めるための準備」と言われても、「次」って何と考えてしまう、次に進めるために「何を」準備するのかが理解できないこともあるでしょう。また準備する内容がわかっても、「どうやれば」準備できるのかで、思考が止まってしまう人もいるかもしれません。
つまり、知識や経験により、各部下の業務の進め方、指示への理解も異なることに気をつける必要があります。また、指示が伝わるか否かは知識や経験だけでなく、世代間ギャップにも要因がある可能性があります。例えば、部下が指示をどのように理解しているのかが、管理職から見えにくいというのは、世代間ギャップに要因があるかもしれません。
経験が浅いうえに世代間ギャップの大きいZ世代の部下には、まず管理職が指示内容を詳細に伝えることが大切です。その際も、「普通、これぐらいはわかるだろう」と自分の認識で指示を端折らないこと、そして部下にきちんと伝わっているのかの確認を忘れないようにしましょう。特に「はい、わかりました」「そうですね、そうします」のみの返答だった場合は要注意です。何がわかったのか、そうしますというのは何をすることなのかを確認しましょう。業務への考え方や価値観が異なるZ世代の部下の理解と、管理職が伝えた内容には、ずれが生じる可能性があることを意識しておきましょう。
3.業務結果は、「当たり前」の見直し教材にする
詳細に業務指示を出し、指示内容に対する理解への確認もして、という指示の際にできる限りのことを管理職が行った場合でも、指示した通りの結果が得られない場合もあるでしょう。管理職としては、求めた結果を得られなかったことで、怒りや落胆など様々な感情が湧き出てくるかもしれません。
しかし、考え方を変えてみましょう。自分ではZ世代の部下の経験や価値観などを理解したうえで、詳細な指示を出したのに、なぜ求めた結果ではなかったのでしょうか。求めたものと違うものになった要因を探るために、Z世代部下への質問とともに、結果が出るまでの間に気になる点はなかったかという管理職自身への問いかけをしてみましょう。
例えば、管理職としては相談してほしいと思ったことについて、Z世代の部下は自分で判断していいものと理解していた、管理職に相談しなければならないほど深刻な内容ではないと解釈していたなどの可能性があります。管理職に相談しなくてもいいとZ世代の部下が判断してしまったのは、なぜかを考えてみることをお勧めします。もしかしたら経験の浅さではなく、管理職自身が想像していなかった考え方や価値観の違いが要因かもしれません。
指示通りの業務結果を得られることはとても大切なことです。しかし、指示通りではない結果になった場合は、新たな世代間ギャップを学ぶ教材であると捉え、Z世代の部下の考え方、価値観への理解を深めていきましょう。そして、次の指示を出す際、また業務経過を見ていく際に、役立てていくことが大切です。
世代間ギャップを埋めて、Z世代の部下と楽しく仕事をしよう
育ってきた環境が大きく異なれば、世代間ギャップを埋めることは簡単なことではないかもしれません。しかし、紹介した3つのポイントのように、世代間ギャップがあるのは当然のこととして前向きに受け入れること、相手の価値観を理解しようとすること、自分の価値観を伝えていくことで、Z世代の部下との世代間ギャップを少しずつ埋めていくことができるでしょう。
お互いの考え方や価値観の理解が進めば、世代間ギャップによる業務指示の伝わりにくさも解消されるでしょう。業務指示がうまく伝わるようになれば、Z世代の部下も業務を進めやすくなります。業務が進めやすくなれば、業務を楽しむ余裕も生まれてくるかもしれません。世代間ギャップを埋め、Z世代の部下と楽しく仕事をしていきましょう。
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