相手を信頼して率直なコミュニケーションが取れる雰囲気作りは、チームの生産性向上に重要であると言えます。しかし、単に「なかよしチーム」「メンバーに優しいチーム」を作ればいいというのではなく、自分の意見が軽視されるなどのリスクを感じることなく、自由に意見や疑問を言い合える、そしてビジョンや目標達成のために意見の相違があれば、建設的に議論できるチームである必要があります。ネットでのコミュニケーションに慣れたZ世代は、リスクを感じることなく自分の意見を伝えられる雰囲気があるチームには安心感を持つでしょう。
ここでは、Z世代に「安心できる雰囲気づくり」が必要な理由を確認するとともに、「できる」リーダーだからこそ、そのような雰囲気作りに失敗してしまう理由、そして、Z世代をはじめメンバーが安心できる雰囲気を作るにはどうしたらいいかについて説明します。
Z世代に安心できる雰囲気づくりが必要な理由
自分が無知や無能だと思われるかもしれないリスクや、意見を述べるタイミングに悩むことは、誰でも避けたいものです。そのような不安を抱えながらでは誰も率直なコミュニケーションをとることはできず、ましてはチームの生産性向上にはつながらないでしょう。ここでは特に、Z世代に安心できる雰囲気づくりが必要な理由を確認していきます。
1.対人コミュニケーションに慣れる
Z世代はネットでのコミュニケーションの割合が多く、対人コミュニケーションが苦手な人も多いと言えます。安心して発言できる雰囲気により、チームメンバーとのコミュニケーションがとりやすくなるでしょう。わからないことを臆することなく先輩に聞けるようになれば、業務も進めやすくなります。
2.挑戦しようと思える
失敗を過度に恐れるZ世代部下にとって、挑戦はとてもハードルが高いものと言えます。失敗が許容される雰囲気の組織であれば、挑戦することに対して後ろ向きの気持ちを軽減させることになるでしょう。実際に失敗して許容された経験をすると挑戦しようと前向きになっていくとも考えられます。挑戦することで新たな経験を積み、チームの戦力に育ってくれると期待できるでしょう。
3.自己肯定感を高める
自分の言動に対して周りの反応を気にし過ぎる傾向のあるZ世代にとって、自分の言動が受け入れられることは大きな安心感につながります。このチームで自分が求められていると感じることができれば自己肯定感を高めることにつながるでしょう。自己肯定感が高まると、コミュニケーションや挑戦へ気持ちが前向きになり、チームへの貢献度も高まります。
「できる」リーダーが失敗する3つの要因
「誰もがお互いを信頼し、活発なコミュニケーションを通じて、チームの生産性をアップする」、「できる」リーダーであればあるほど、そのようなチームにすることに奮闘するのではないでしょうか。しかし、「できる」リーダーだからこそ、うまくいかない場合があります。ここでは、その3つの要因について説明します。
1.過去の成功体験に引っ張られてしまう
成功体験は誰にとっても大切なものです。成功体験により自信にもつながります。しかし、環境が異なれば、やり方も異なるのは当然です。ましてチームは多様な個性の集まりです。同じことをやってうまくいくとは限りません。成功体験にこだわれば、メンバーが安心できる雰囲気作りは難しいと言えるでしょう
そんなことわかっていると思われる人もいるかもしれません。たまに自分が行っていることを振り返ってみてください。どこかで、前はうまくいったのに今回はなぜうまくいかないんだと思っている自分がいる可能性もあります。成功体験を生かすことは大切ですが、まずは今のチームの状況をしっかりと観察、理解することを優先しましょう。
2.チームの目標に集中してしまう
会社のビジョンをチームとしての目標に落とし込むことはリーダーの役割です。そしてそのチームの目標を達成することがリーダーには重要なこととなります。一方でチームの目標をメンバーの能力や個性などに合わせて、各メンバーの目標に落とし込むこともリーダーの役割です。しかし、「できる」リーダーはチームの目標を達成することがチームの評価につながることにもなるため、チームの目標を意識しすぎて、各メンバーの目標設定やメンバーが自分の目標について腹落ちしているかなどの対応は後回しになっている可能性があります。
各メンバーの目標への落とし込みがきちんとされないと、メンバーは自分の役割が腹落ちしないまま業務を続けることになり、腹落ちして業務にあたるより生産性が期待できない可能性があります。それはチーム目標の達成に影響を与えることになり、チームの生産性向上にもつながりません。まずは、チームの目標が各メンバーの目標に落とし込めているのか、各メンバーがその目標に向かって進んでいるのかを確認してみましょう。
3.管理することを優先してしまう
リーダーであれば、チームの管理は大切な役割です。安心できる雰囲気づくりのため、メンバーにいろいろと求めているうちに、メンバーが自分の求めていることに応えているか、自分の理想のようにチーム環境は改善できているかなど、気がつくとチーム、メンバーを管理することが優先され、安心できる雰囲気に向かっているかを確認することが後回しになってはいないでしょうか。安心できる雰囲気作りは、簡単にできるものではありません。時間をかけてそのような雰囲気をはぐくんでいくものです。自分が目指しているチーム環境の実現を急ぐあまり、「はぐくむ」のではなく、チームを「管理」することが優先されていないかを、定期的に自分に対して確認してみるのもいいでしょう。
Z世代が安心できる雰囲気をつくるには
では、メンバー、特にZ世代が安心できる雰囲気を作るにはどうしたらいいのか、考えてみましょう。ここでは3つのポイントを紹介します。
1.多様性を受け入れる
チームメンバーは様々な個性を持っています。ニーズが多様化している現在、多様な個性を持つメンバーの価値観が役に立ちます。特に個性を重視するZ世代にとっては多様性を受け入れることは当たり前のことと感じているでしょう。しかし、日本の職場では多様性を受け入れる潮流になってきたとはいえ、年齢、役職、性別、職場における上下関係に合わせた各々の役割、期待に沿った発言を求められることも決してなくなったとは言えません。そのため、普段からリーダーが積極的に各メンバーの意見を引き出すようにする習慣を持つことが大切です。多様な意見があることがチームに浸透することで、多様性を受け入れる土台がチームにできていくでしょう。
2.信頼関係を作る
安心して意見を言う、議論をするには、相手との信頼関係がなくては成り立ちません。日本では、信頼関係以前に、相手の顔色をうかがって自分の言いたいことを言わずに、相手に合わせることが当たり前になっている職場もあるでしょう。
例えば、お客様と話をしていて、お客様の社内状況に変化があり、自社にも影響があるかもしれないと感じたとします。でも、お客様に直接言われたわけではなく、なんとなく感じたくらいの話では、「ちゃんとわかってから話せ」と言われそうで上司に話すのはためらってしまうかもしれません。このように、先に相手が受け入れてくれるかを考えてしまうという人も多いのではないでしょうか。そのため、リーダーは、メンバーが発言しやすいように、どんな些細なことでも聴く姿勢を持つことが大切です。そして、発言に対して、どうしてそのように感じたのかなど質問を返すとこで、メンバーはわかりやすく話そうと能動的になり、その結果、具体的な話に進む可能性があると言えます。
このような積み重ねにより、お互いが受け入れられているという実感がわき、信頼関係につながることができるでしょう。メンバー同士の信頼関係を作るためにも、まず、メンバーの発言を受け入れるところから始め、リーダーは各メンバーとの信頼関係を築いていきましょう。
3.コントロールをしない
「できる」リーダーがしてしまいやすい失敗でも説明しましたが、少しでも早く安心して発言できる雰囲気をチームに作りたいと思うがあまり、どうしても自分でチームを管理、コントロールしたくなってしまう気持ちがあるでしょう。しかし、安心できる雰囲気作りをするには、そこを我慢することが大切です。
自分が多様性を受け入れ、メンバーからの多様な意見を引き出すようにする、そして、自分とメンバーの間から信頼関係を作っていくという、土台を作ったら、あとは待つだけです。リーダーとメンバーの信頼関係、リーダーが他の人とは異なった意見でも受け入れてくれるという安心感、これがチーム全体に広がり、メンバー同士の信頼感、多様性の受け入れにつながるのを待ちましょう。早く進めたくてコントロールしようとするとリーダーの権限が強くなってしまい、せっかく作った安心できる雰囲気の土台がチームに定着しなくなってしまいます。思いは強くても我慢して待つ、これがリーダーに求められることです。
活発な意見交換ができるチームにして、生産性を高めよう
安心して活発な意見交換ができ、生産性を高められるチーム。望むのは簡単ですが、そのような雰囲気作りには時間がかかることがわかり、少し消極的になってしまったリーダーもいるかもしれません。しかし、時間がかかるからこそ、そのようなチームになったときには簡単に他のチーム、他の企業にはマネのできない、模倣困難性という強みを持つことができます。
安心できる雰囲気のあるチーム作りに挑戦し、チームの生産性を向上させましょう。
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